設立60周年に寄せて
高橋 精一
正月休みが終わり、お世話になっている方々へのご挨拶回りも済まし、さあこれから新しい年の仕事に本格的に取り組もうかと思っている矢先、盛岡市手をつなぐ育成会からの封書が届きました。「何かな」と微かな疑念で開封すると、この原稿依頼の文書でした。「困ったな」と思いつつ、昨年の式典では表彰をお授け頂いたことでもあるし、日頃の思いを拙文ながらお届けする機会と気を取り直しパソコンに向かうことにしました。
娘の「ちかえ」は今年31歳になります。少し重いダウンで言葉は出ませんが、相手の言うことはある程度理解できるようで、日常生活で家族がさほど困ることはありません。姉達二人が家に居た時は皆の中心的存在でしたが、今は三人だけの生活に時々幼い甥と姪を伴って姉たち家族が遣って来ると、大勢の中で少しかすみがちですがニコニコと過している最近です。
この「ちかえ」が生まれてから自分自身の生き方が一変しました。それほどに重い衝撃でした。それまで障がいがある人と余り接する機会を持たなかった身として、何で我が子がと信じがたいものがありましたが、その事実を突きつけられて受け入れざるをえなくなったことによってです。
その当時から社会福祉充実がニーズとして高いものもありましたので、この子たちの成長を支える仕組みがきちんと整っているとばかり思っていましたが、どうやらそうでは無く、保護者である自分たちがこじ開けなければ通してもらえない人口があることも知りました。今は、理解ある方々も多くいます。小生が小企業の経営者として同業あるいは協力企業の仲間たちに協力を呼びかけるとほとんどが快い反応を示してくれます。これも偏に盛岡市手をつなぐ育成会草創期からはじめとする先人の皆様がご苦労されながらも切り開いて来たものが漸く報われつつあることを示すものです。道のりのゴールはまだ先が見えないほど遠くに続きますが、良き理解者を増やしながら、障がいのある人を含むすべての人たちが心地よく安心して暮らせる世が来るよう、これからも微力を尽くし応援して行きたいと思っています。